なぜ安倍政権はトランプ勝利を
予測できなかったのか?
即座のトランプ詣では正しかったのか?
作家・哲学者の適菜収が「安倍政権の無能と欺瞞」を討つ!
チンパンジーが操縦するジェット機
メディアやネットで、トランプと安倍をひとくくりにして論じているものが目に付いたが、おそらく違う。端的に言えば、安倍はグローバリストであり、トランプはナショナリストだ。
現在安倍政権を支持しているのは、利権がある連中か、単なる反左翼の思考停止した連中(保守系論壇誌に多い)か、新自由主義を保守と勘違いしているバカか、改革幻想に踊らされた花畑=B層である。改革という言葉に飛びつきカモにされる層だ。
戦後の幻想の平和に酔っている「戦後民主主義者」と安倍支持者は同類である。
幻想のリアルポリティクス(実態は売国・壊国)に酔っているだけで、平和ボケであることに変わりはない。
一方、トランプの支持者はD層に近い。2005年に内閣府が広告会社スリードに作らせた定義によると、「既に構造改革に恐怖を覚えている層」。グローバリズムの恩恵を受け取っておらず、不満を抱えている層といってもよい。このルサンチマン(恨みつらみ)や社会に蔓延する悪意をトランプはうまく吸収した。
また、「日本は今回の結果に右往左往しないほうがいい」という意見も散見されたが、右往左往せざるを得なくなるはずだ。トランプという人間は信用できないし、様々な勢力に丸め込まれる可能性もあるが、これまでの発言を忠実に実行するなら、日本の政治を根底的に変える。
やるべき国防(個別的自衛権の強化)をおろそかにし、妄想を膨らませた上で集団的自衛権がどうこうと浮かれ立ち、移民政策を進め、TPPを推進し、農協や家族制度の解体をはかり、皇室を軽視し続けた安倍とその周辺の一派、メディア、言論人は、後ろ盾を失ったわけだ。
私は近著『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)で、安倍の発言を分析し、その正体を明らかにした。安倍は世の中で誤解されているような「保守」でも「国家主義者」でもなく、周回遅れたグローバリストである。また、政治、憲法、歴史、伝統などに対する敬意も基礎知識もない。
このまま安倍に政権を委ねるのは危険だ。
われわれ日本人はチンパンジーが操縦するジャンボジェット機に乗っているのである。
ヒラリーが拒絶されたのはなぜか?
トランプやサンダースのような政治家が支持を集めたのはなぜか?
世界各国が「保護主義」の動きを強めているのはなぜか?
こうした本質的な問題に気づくこともなく、安倍はフリチンで外に飛び出している。
レッドネックと呼ばれるような人々までが、目の前で何が発生しているのか気づき始めているにもかかわらず。
安倍は他人とコミュニケーションをとることができない。
議論が苦手なので、一方的に自分の正義を唱えるだけだ。
批判には一切耳を貸さない。
だから失敗に気づくことができず、「この道しかない」「この道を。力強く、前へ。」となってしまう。
今わが国がやるべきことはなにか?
チンパンジーを操縦席から引き摺り下ろすことである。
著者略歴
適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)など著書多数。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が11月16日に全国書店、Amazonで発売。
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